1.自社ECで楽天・アマゾンと戦ってはいけない。

中小企業にとって自社ECは、独自性の出し所・戦略の練りどころです。
よほどブランド力があり多くのファンのついている企業であればアマゾンや楽天・Yahoo!ショッピングと同じ戦略で、新規のお客様が検索して商品を買う窓口になりえると思うのですが、多くの中小企業にとってはそうはいきません。
地元で人気のある企業でも、お客様が商品名で検索してもドメインが弱く表示されない、強くするには多額の資金・時間を必要とします。楽天・アマゾンで販売できるものなら、手数料はかかりますが、そちらで販売したほうが効率はよいことが多いです。
新規顧客からの売上UPを自社EC構築の目標にすると、目標まで多額の資金・時間を必要としてしまい疲弊してしまいます。
一方で、私は自社ECを構築することをお勧めしています。それはなぜでしょうか。
私は、自社ECでは楽天・アマゾンでできないことをするべきだと考えています。
例えば、実店舗を持つ事業者が、オンラインを「店舗を中心としたファン密度アップ・リピーター購入の場」として位置付け、既存顧客がファン度を増すSNSとも連携したECを構築する、「海外にも販路を広げる」などです。
2.ECニーズ多様化の背景
事業者が、多様化する自社を保持できるようになったのには、ShopifyをはじめとするECプラットフォームの目覚ましい技術進歩があります。比較的安価で自社のサービスにあったECを構築ができるようになったのです。
また同時に多くのECが乱立し、普通のECだとなかなか見つけてもらいづらくなったというのもあります。
3.多様化するECの形:単なる「買う」を超えた顧客体験
現代のECは、それぞれの目的と顧客層に合わせて、実に多様な顔を見せています。

1. 会員限定(クローズド)EC:ファンと「特別」を共有する場
誰でもアクセスできるオープンなECサイトとは異なり、特定の会員だけが利用できるECサイトが増えています。
- 目的: 既存顧客のロイヤルティ向上、ブランドコミュニティの強化、限定感の演出。
- 事例:
- VIP顧客向けの先行販売や限定商品の提供。
- ブランドの熱心なファンクラブ会員のみが利用できるクローズドEC。
- 企業間取引(BtoB)における特定顧客向けの専用購買サイト。
- メリット: 顧客に「特別感」を提供し、ブランドへの愛着を深めることができます。価格競争に巻き込まれにくく、安定した売上を確保しやすいのが特徴です。
2. 越境EC:世界へ市場を広げるチャンス
国内市場だけでなく、海外の顧客に商品を販売する越境ECは、中小企業にとって新たな成長エンジンとなり得ます。
- 目的: 市場規模の拡大、新たな顧客層の獲得、ブランドのグローバル化。
- 事例:
- 日本の伝統工芸品やアニメグッズ、高品質なアパレルなどを海外向けに販売。
- 現地の決済手段や言語に対応し、現地の法規制に則った運営。
- メリット: 国内市場の縮小傾向にある中で、海外に活路を見出すことができます。世界中の顧客をターゲットにすることで、事業のスケールを大きく広げる可能性があります。
3. 定期購入(サブスクリプション)EC:安定収益と継続的な関係構築
食品、化粧品、日用品、アパレルなど、特定のサイクルで商品を届ける定期購入モデルは、顧客との継続的な関係を築き、安定した収益源となります。
- 目的: 顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)向上、売上の予測可能性向上、在庫管理の効率化。
- 事例:
- コーヒー豆、クラフトビール、健康食品の定期配送。
- コスメや美容液の毎月お届け便。
- アパレルであれば、毎シーズンおすすめのコーディネートアイテムを定期的に送るサービス。
- メリット: 一度顧客を獲得すれば継続的な売上が見込めるため、マーケティングコストを抑えつつ、安定した経営基盤を築きやすくなります。顧客の利用データを分析し、パーソナライズされた提案を行うことで、さらに顧客満足度を高められます。
4. イベント販売・体験型EC:リアルとオンラインの融合
限定的な期間や特定のイベントに合わせて商品を販売したり、オンライン上で「体験」を提供したりするECも増えています。
- 目的: 顧客エンゲージメントの強化、希少性の演出、新規顧客の獲得。
- 事例:
- ライブコマース(ライブ配信中に商品を販売)。
- クラウドファンディング型EC(支援者へのリターンとして商品を提供)。
- オンライン料理教室と連動した食材セットの販売。
- 店舗での限定イベントや予約販売と連携したEC。
- メリット: 単に商品を陳列するだけでなく、ストーリーや体験を提供することで、顧客の購買意欲を高め、ブランドへの愛着を醸成します。リアルとオンラインの融合(OMO:Online Merges Offline)を推進する上でも重要な戦略です。
3.地方や店舗が中心となるECの未来:ファン密度を高め、リピーターを生む仕組み
これらの多様なECの形の中でも、特に「店舗を中心としたファン育成・リピーター購入の場としてのEC」は、実店舗やイベントで顧客を獲得する中小企業にとって大きな可能性を秘めているのではと考えています。
実店舗・イベントでは、顧客が商品を手に取り、試着し、スタッフと会話する「体験」というECでは代替できない価値を提供します。このリアルな体験で生まれた顧客との接点や信頼関係を、ECサイトでさらに深めることが重要です。
- デジタル顧客体験の強化:
- 店舗で獲得した顧客情報をECサイトと連携させ、購入履歴や好みに応じたパーソナルな商品レコメンドや情報提供をメルマガやアプリを通じて行う。
- 店舗で試着した商品をECサイトで後日購入できる「オンライン取り寄せ」や、店舗在庫をECサイトから確認できる機能。
- 店舗で開催するイベントやワークショップへのEC会員限定の先行予約。
- ファンコミュニティの形成:
- 会員限定ECやイベント販売を通じて、顧客同士、あるいは顧客とブランドが交流できる場をオンライン上に提供。顧客の声を取り入れた商品開発や、ブランドアンバサダーの育成にも繋がります。
- オムニチャネル戦略の推進:
- 店舗とECがシームレスに連携し、顧客がどのチャネルでも同じように快適な購買体験を得られるようにする。例えば、ECで購入した商品を店舗で受け取ったり、店舗で試着したものを後日ECで購入したりする導線を強化します。
これにより、ECサイトは単なる物販の場ではなく、店舗で育まれた「ファン」が、いつでもどこでもブランドと繋がり、リピート購入し、さらにブランドの魅力を広めてくれる「コミュニティの中核」へと進化するのです。
まとめ:ECの多様化は中小企業の「独自性」を発揮するチャンス
ECの多様化は、大手ECモールに依存せず、自社のブランドや顧客との関係性を重視する中小企業にとって、大きなチャンスです。
構築の費用は、Shopifyなどのプラットフォームを活用すればそこまで高くなく、運用の仕組もわかりやすいです。
画一的なオンライン販売から脱却し、
- 会員限定の特別感でコアなファンを育成する。
- 越境ECで市場を世界に広げる。
- 定期購入で安定的な収益基盤を築く。
- イベント販売で顧客との深い体験を創出する。
貴社の強みや顧客層に合わせたECの形を戦略的に選び、デジタル技術を最大限に活用することで、単なる「オンラインで物を売る」を超えた、顧客に愛される持続可能なビジネスモデルを構築できると思います。
弊社では、ECの戦略立案と構築まで承っています。ぜひお問合せください。

